ドラマチックな「君が代」
高槻の世代には「君が代」を嫌う人が多いのですが、珍しく、高槻はこの曲を大きく評価しています。たった11小節で、しかもシンプルなメロディーをシンプルにアレンジしているだけですが、なんともドラマチックに聴こえるではありませんか。多くの人は「君が代」をつまらない楽曲だと感じているのかもしれませんが、高槻は作者の「情」に、大いに共感します。
メロディーは「ファ」と「シ」を抜いた、陽旋法を基本にしていますが、それに縛られることなく、4小節目は「レ・シ・ラ・ソ」としていますね。低い「レ」から始まり高い「レ」まで使用して最後はまた低い「レ」で終わるところに職人技を感じます。四分音符を基本としたシンプルさにも好感が持てます。ジャズのスタンダードも、本来は四分音符の羅列なのですが…。ちなみに、陽旋法は「レ」から始まる音階ですが、同じ音を使って「ド」から始め高い「ド」で終わらせると、ジャズで言うところのペンタトニックです。
オーケストレーションが美しいと思います。3和音のみを使い、7度の音は一切入っていない点が高槻には新鮮です。何が何でも7度を入れ「濁らせる」ジャズとは(ついでにいうと積極的に増4度も使う)正反対の考え方ですね。
メロディーは和風ですが(ペンタトニックと解釈すれば西洋風ですが)、和音は西洋風なんですね。演奏に使用する楽器も通常のオーケストラの編成です。「雅楽バージョン」というのがあるのかどうか知りませんが、あえて、ベタな和風に閉じてしまわないアレンジを見識アリと判断しました。和洋折衷が成功している例でしょう。
古典的な楽典を逸脱しないコード進行も憎いです。3小節目の終わりが「F」なのを受けて4小節目が「DonF# G」と始まるのは普通ですが、その後の2拍で「Dm Em」と締めくくるのがオツですね。ちなみにピアノ譜ですと、完璧な開離位置(左手と右手がそれぞれ2音ずつを担当する)になっているのも、アレンジとして美しいと思います。
歌詞は五七五七七(字余りですが)、メロディーは11小節という半端な小節数、テンポは四分音符=69(今風なら69BPMですね(^^)とまあ、マニアックです。多くの定型的制約の中によくこれほどの想いと情感を詰め込めたものだと、感心してしまいます。